江戸カルタ「よみ」分室別館

〜『雨中徒然草』全文のテキスト翻刻 HTML版です〜


『雨中徒然草』明和六年序(1769)

かるた目付ゑ 雨中うちふ徒然草つれ/\くさ

   叙
せんをすゝめ悪をこらしむる昔よりせいけん者のおしへはまのまさこよりおゝしといへとも四角四めんのへんくつゆへ下こむのひとをもしろからすかな本にをとけましりのきやふ訓をあんし出すこと其こう大かくにすきたり此さつハ悪をにくませるため中にすて有しをひろい雨中徒然草つれ/\くさと題しぬ
   明和六丑ノ正月

(序1オ×1ウ)

すゝめ海中に入はまくりとなるとわ久しいことはなれ共誰もミた人もなしいま目前に掛取へんしてれい者となる一夜明れハ気もへんしアヽまゝのかわまた今年も三百六十余日と子供相手のすこ六もそれ箱根しやから日本橋へかへらしやれ此返答へんとうに行くれし折から亭主ていしゆ御内かまつ夕礼なれと御目出たしなんとすこ六よりよミハ気なしかされハ/\気ハあるけれと役とやらをしらぬさつてもきついやほしやななせ箱根から帰りし事ハいなならわぬきやうハよまれぬ道理これを見たまへ此一冊ハ我等大切の役付しらぬハ末代のはししや
  みたまへ/\

(序2オ×2ウ)

  書付をミれは
それ加留多わ陰陽いんやう合をひよやふし相合を本儀として合初むるのことふきなりよつて加富多とミをくわへをゝしと名附正月より十二月をひやふし節分より一陽の気さすところをもつて下より上へ切上/\陰わ陽にかへす三々九の数をまき落絵おちへと云テ一枚とるハ大極なり四所へ九枚つゝまくハ四九三十六しんをかたとり一人やすむときハ絵数三九二十七右の大極一枚をくわへて天の二十八星をとれり十につくりてハ一へかへれハ十一月とう時ハ異国の正月と云亦本儀に生る心を以て十一を午といふ十二月物こと納り切と云心て十二を切と云異国いこくにて此名をうんすんと云其形丸きをおゝると云半月をこつふと云青きをいすと云をゝるハ玉なりこつふハさかつきなりいすはほこなり赤絵ハ天かいと云則からかさなり大皷たいこ二ハかゝミなり玉鏡剱をひやふしたるハ三種の神宝なり傘くハんいの気比きひ大臣日本へ帰朝の後ぬいはくそめ物所と云ものをはしめたまふゆへ二にかゝミの形を絵書たまふ正月このかたちある絵を手にふれたる人は神徳を得て七なんをのかれ七ふくのくわにをふ去によつて七まい金入と云二に花かたを付大このことくなるゆへうつと云又十二月よミつきる心にてよむとも云五こく成就の心をもつてまくと云上るとハいねをうへて出る心なり一節に目出度田をかる故にかるたと云
青切ハ日本人青馬ハ唐人青二ハ龍人青十ハ釋迦如来しやかによらい青三ハ三種さんしゆ天人地三徳あさは虫をひやふす黒金をくいしと云ハあやまりなり大人小人共に虫の病ハこふたゐすさましき大病一より十をまてといへとも十をこし十二迄神通を得たり此虫の大毒によつてもろ/\のむしのミ迄をそるゝゆへ蚊のましないと云伝ふ座中の金銭を喰上る故黒金を食すならん

 作者
  太楽

    [勝負の字の印]

(序3オ×5ウ)

 黒十八 白二十 附
 たとへハ
  壱角なれハ
   黒かた一ツ五十穴
   白かた一ツ五字
点料てんりやう二ケ
 白一ツ 白一ツ 合一番

是をのけ置候得は一はんに四宛ノ石たまり黒と引かへミれハ黒石の数二十となる壱角分也○但二はん半に黒ニツ割○黒二十あれはかるた打候数五十はんにすミ申候○壱角分二十也内極次第にて入目引○役打上度次打事是も極によつて打也十云ハ十一人前よりとれハ石一宛うつ尤めい/\こまりにひを打ハ二角もたまる故にわり返しにをゝし是ハミはからい候きわめにあり
たいかいハ五百字にあつかうときわ入目石二百字たけのけて割三百字にあつかふときハ百五十字のけてわる
割返しと云ハ此石ウタレたる人のかたへ十に一の割を以てかへせハをのつからうたれ数すくなく乗たる人の乗かつも多し是を当せいの割返しと云也いつれの大小かけにても此心也またなけ込と云ハ壱角なれハ壱角切のかちまけゆへに何ほと打れても壱角より不出乗たるかたより乗かたニ而たん/\助てミれハ壱角にて済也

役ハ揃壱と立二役三役四役云 是一二三四
  上
   七金もの二おち
是に三折かけかそゆる也
折かすハいく折にてもきわめ次第也たとへハ団四役下三二役青二上にてミれハ数四合セて八なり是三折二十四也○よひ出しと云八落絵を入て役にするを呼出しと云なり○是をしりをこしと云しりをこしなれハたとへ青馬なれハ役数○二付○三光○こんてい此分ふへて○団四○下三二○こんてい二○三光○二付一数四役数十也上リ二落二十四也三折四十四也何も此心也
たて云ハ青物役のとき上つゝ取ハたとへ青切青九しやかと有九十ニ而も三本ならひ也青建ニ而なけれハ九にて間きるゝゆへに一本附廻しと云ハ其役数五役有ハ馬二の上五所へ五度当る落四か四五二十
古ハ一九なとゝ云ことあれとも割合かたよる故にウタレ程の乗なしよつて高き古人是をかんすと云也
かるたハまりのことくすなを上る事を覚へすしては我かへつて役をウタレむりに手前の絵合能するときハきわめてむかふの絵都合よしうち出しととめ所か大事也親出をかやさつにくミ同二番附時ハ二はんに役有親くる絵か親役なれハ二はん打きりかるた也十馬きり二通とミゆる割返しハかちたる所へらしうたれたる所へ三はん役ウタセつかふすれハわり返しおのつから大やふ成によつて我わり返し多く取故ウタレ少し一けんかちすくれは両方割少し此心付る事割返の伝なり

(序6オ×8ウ)

 相合印
○     しら絵之印
□     ごミ入之印
△     青物之印
[瓢箪形] あつかい之印
[瓢箪形](以後「あつかい」と記す)印ハ上り落にかまハすの事也

(序9オ)

五光
 [青二][釈迦十][太皷二][青切][青馬]
 [あざ]
 あつかい
 ○ 団十  五
 ○ 五光 団五 竹四
 ○ 四光  五
 ○ 天上  三
 ○ 上三  三
 ○ こんてい三
   光  一
   二付  一
   〆三十役

(1オ)

こミ五こう
こミ五光とハ初にしるす五光の絵の外に残三まへハつねのいきものにて十馬切ひんの内一まへニ而も二まへニ而も入ハこミと云よつてやく安し
又しらへの五光は初にしるす絵の通にて残り三まへの内生もの無キをしらへと云いつれも此のことし
 □ 五光  五
 □ 団   同
 □ 四光  四
 □ 上三  二
 □ こんてい二
   光  一
   光  二
   〆廿

(1ウ)

五光
 [コップのぴん][青二][青三][青四][青五]
 [あざ]
┌○ 五光 団五 竹四
└□ 五光  五
┌○ 四こう 五
└□     四
┌○ 下三  三
└□
 ○ 弁天  三
   ほうひ 一

(2オ)

四光
 [釈迦十][青馬][青切][あざ]
┌○ 四こう 五
└□     四
┌○ 天上  三
└□     二
┌○ こんてい三
└□     二

(2ウ)

団十郎
 [青二][釈迦十][あざ]
 五

(3オ)

竹つな
 [あざ][太皷二][釈迦十]
 四

(3ウ)

下六光
 [あざ][青二][青三][青四][青五]
 [青六]
 打て あつかい

(4オ)

ねはん
 [青二][太皷二][青切][青馬][あざ]
 □ あつかい
 此[太皷二]なくてもよし

(4ウ)

三ごくてんらい
 [青三][青五][青九][あざ][釈迦十]
 五
 打 あつかい
 しやか[釈迦十]ぬけて三五九一ト云
 打て あつかい

(5オ)

おふとう
 [青馬][オウルの馬][コップの馬][青切]

(5ウ)

天上
 [青切][釈迦十][あざ]
 ○ 三
 □ 二

(6オ)

こんてい
 [青馬][釈迦十][あざ]
 ○ 三
 □ 二

(6ウ)

上三
 [釈迦十][青切][青馬]
 ○ 三
 □ 二

(7オ)

下三
 [青二][あざ][青三]
 ○ 三
 □ 二

(7ウ)

中三
 [太皷二][あざ][青三]
 ○ 二
 □ 一
 此ゑの外に
 四入ハ中四
 五入ハ中五
 下五光に同
 尤石一ましに取

(8オ)

へに三
 [海老二][あざ][青三]
 ○ 二
 □ 一
 中三に同し心なり

(8ウ)

えひそう
 [海老二][釈迦十][あざ]
 ○ 四
 □ 三

(9オ)

惣十郎
 ○ゑに[釈迦十][コップの十][オウルの十]
 出して四
 打てあつかい

(9ウ)

さいきやう
 [釈迦十][あざ][コップの十]
 御きやくとも云
 一
 打て五ノほうひ

(10オ)

につけ馬
 [青馬][あざ][青二]
 ○ 二
 □ 一

(10ウ)

しゝ
 [青二][あざ][太皷二]
 一

(11オ)

てん/\
 [青二][太皷二][釈迦十]
 一

(11ウ)

ち鳥
 ○ゑに[青馬][あざ][コップの馬]
 一

(12オ)

よりまさ
 ○ゑに[青馬][釈迦十][オウルの馬]
 一

(12ウ)

源平 かけきよ大ミやうはた本共いふ
 [青切][あざ][オウルの馬]

(13オ)

せんかく寺
 [青切][コップの切][オウルの切]
 まさむねとも云
 青の十入てハせんかく寺のおしやうといふ

(13ウ)

きく五郎
 [釈迦十][青五][あざ]

(14オ)

じんめい
 [コップのぴん][青馬][オウルのぴん]
 両くち共云
 ひん一まへあれハかたくちといふ

(14ウ)

相馬
 [青馬][オウルの馬][コップの馬]

(15オ)

さゝき
 [青馬][青切][オウルの馬]
 かち原共云

(15ウ)

市まつ
 [釈迦十][青三][あざ]

(16オ)

きく治郎
 [青馬][青切][あざ]

(16ウ)

かうし町
 [釈迦十][コップの十][オウルの十][青切]

(17オ)

下四光
 [あざ][青二][青三][青四]
 ○ 五
 □ 四

(17ウ)

龍のひけ
 [オウルのぴん][コップのぴん][青二]

(18オ)

(挿絵)

(18ウ)

野馬
 ○ゑに[青馬]
 打てあつかい
 但しをや出半あつかい
野切
 ○ゑに[青切]
 一
 打て竹四○ほうひ

(19オ)

弁てん
 ○絵に[あざ]
 三打て四
 ほうひ
こゝく寺
 ○ゑに[釈迦十]
 三打て五ホウヒ
 [九の札]なしなれハ半あつかい

(19ウ)

つなき馬
 ○ゑに[青馬][あざ]
 ○ 三
両さし
 ○ゑに[釈迦十][あざ]
 かるこ共云
 ○ 三
 打て五ほうひ

(20オ)

しうろん
 ○ゑに[釈迦十][コップの十]
 座との坊共いふ
 一
 打て半あつかい
う治川
 ○ゑに[青馬][コップの馬]
 出して一
 打てあつかい

(20ウ)

二本ひかり
 ○ゑに[釈迦十][青切]
 一

 ○ゑに[釈迦十][青馬]
 一

(21オ)


 ○ゑに[青馬][青切]
ひけ
 [釈迦十][コップのぴん]
 ひん一まへハ一
 二まへハ二
 三まへ三
 虫入四是ヲたい/\ひげといふ

(21ウ)

かむろ
 ○ゑに[あざ][コップのぴん]
 おひとり共云
 二まいハふたりかむろ
 へんひんと云
 一
やりをとり
 ○ゑに[青切][あざ]
 ○ 三
 □ 一
 同しなから切に虫打よし

(22オ)

かこかき
 [青切][オウルの切]
 十を二まへにてもかこかき也

(22ウ)

五せつく
 ○ゑに[あざ][青三][青五][青七][青九]
 これへ八入てたなはた八さくと云二やく外に取

(23オ)

五くるま
 [コップのぴん]一
 [釈迦十]   五
 [青馬]    三
 [青切]    三
 [青二]    五
 [太皷二]   四
 [青三]    三
 [あざ]    あつかい
 五六七八九十馬切と八まへ揃て右にしるし置く八まへの内ひんでとまれハ一役十ハ五やく切馬三とたん/\とくらいをつけて取なり
 五車の[青五]とめを助高屋ト云
 五車青とめ あつかい
 あをとめといふハ五と打とめと青ものなるを云

(23ウ×24ウ)

はね
四はねをわらしきれト云
 [青切]    五
 [コップのぴん]三
 [あざ]    あつかい
 同しゑ二まへヽそろふをはねと云

(24ウ)

   切はねにハ切三まへ
   ひんも同し事
 右にしるすゑハ切はねハ五役ひんはねハ三役虫ハあつかいとしらせるためなり

 [青三]    三
 [青九]    同
 [青馬]    同
 [青二]    同
 [釈迦十]   同
 同しゑ九まへの内三まへあれハそろ也
三々そろは
 同しゑ三まへヽ三色ある也
そろ
 上なし 一 下なし 一
 切なし 一 九なし
 十なし 五 ほうひ
 上なしとハたとへハ三そろに四なき時ハ上なしと一役とり又二なけれハ下なし一取右にしるさぬそろハ一役なり尤やく有次第取ル惣而切無揃四ほうひ

(25オ×26オ)

九度
 たとへハ壱ト三ト五二まへ七弐枚九二まへ十壱まへなそと九まへ有を九度に打故半めの九とと云長目の九度も此心なりつゝきたるゑなき故九たひに打ゆへ也

(26オ)

五下
 五よりしたのゑ九まへ有を云
西のかハら
 五下にしやか十入
しゆらとう
 五下に青切入
ちくしやうとう
 五下に青馬入
あぶな
 三々そろに一まへちがいたるを云
 虫入ハむし入三々そろと云又二まい/\にそろひ一枚々々にちかい虫あれハ虫入あふなと云三まへ/\に二通そろい又二まへ揃い一まへちがいたるをキあふなと云

四下
 四より下のゑに五下の心なり
 出して あつかい

(26ウ×27オ)

くつし
二くつし
 しらなれハ あつかい
 九まへの内に二三まへあれハ二くつし也尤生もの有てもよし
馬くつし
 同し心なり尤切有てハくすしにならす
白馬くつし
 馬三まへにひん一まへ

(27オ)

ひんくつし
 おやてになし
 ひん三まへ有れハくつし
五まへくつし
 弐まへつゝ弐色と外一枚
 是ハ四人目のゆるし
大引馬ひん
 馬二まへひん二まへなり
まちかい
 馬ひんのうち二まへと一まへ有を云
十ひん
 十三まへひん一まへ也
二まい/\
 ひん二まへに二弐まへにても
二なし三三まへ是ハ二くつし有ゆへねられす

(27ウ×28オ)

一九 二十 三馬 四切
 一より九迄揃有を一九と云
 二より十迄揃を二十と云
 三より馬迄揃を三馬と云
 四より切迄揃を四切と云
一八の切 二九の切
 おやて打きり
 一より八迄揃イ切あれ一八の切と云
 二九の切も同し心なり
八上 五  九上 あつかい

(28オ)

十上ハ 三々そろ也
 八より上のゑ九まへあれハ八かミなり九上も此心なり
ツ取
ひん/\八
 ひん二まへに二より八迄つゝくを云
三ひん七
 ひん三まへ二より七迄つゝくを云
四一六
 あつかい
 虫を入ひん三まへ二より六迄つゝきたるを云

(28ウ)

九花
 あつかい
 いきものなしの青物をはなと云これを九まへもてハ九はな也
八花
 ○ 五
 △ 四
 ほうひ付出しを不取
七花
 ○ 五
 △ 四
 ほうひ二
六花
 ○ 四
 △ 三
 [太鼓二]此二入て文金と云いつれの花にても此二有れハ文金入とてほかに一役取
惣生
 あつかい
 ひん十馬切虫をいき物と云是ヲ九まへあれハそういき也
八生
 五
 四ほうひ
 生もの八まへなり
七房
 五
 二ほう
 同しく七まへなり
六房
 四
 同しく六まへなり

 惣生あつかうハわきにけつして白絵有によりめつらしき故ほうひ也惣青ハのそミなき時出てハ半あつかいなり是は高キ人の知所也

(29オ×30オ)

かるたハ人の心をうきたてわつさりとにきわしきか第一なり人の本心善悪を此徳によつて知りちへをくらふる大楽しミけんこふのいわくもの事心をちつかすと云しも暮の仕廻あしき事よりかんかへ云しとミへたり正月かるた打てたのしむ人ハ冬年ゆるやかなる故なり正月かるたをうたぬ人ハとこやらか三ほふのかハらけそこなきこゝちならんまた来春も目出度打ませう

 狂哥に
長生の豆を
  そふミの
           多から
うちての
  子つちふゆる
         孫つち

明和七
 寅の正月目出度日

(30オ×30ウ)

公開年月日 2009/08/30

最終更新日 2011/09/15